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マイルス・デイヴィスのアルバムを年別に紹介

1980年~1985年のMiles Davis

・1970年代後半の半引退状態から復活。1981年6月にボストンの「キックス」で復帰ライブ。「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」をリリース

・マイルスがセレブ&ポップ化していく時期。

・1980年9月15日にピアニストのビル・エヴァンスが死去。

・1981年にシシリー・タイソンと結婚する。

・1982年から本格的にを描き始める。

・1985年に、1950年代から在籍したコロンビアを離れ、ワーナーに移籍する

「あまりにも長い間吹いていなかったから、唇はダメになっていたし、それを元の状態まで戻すには時間がかかるはずだった。だが、それ以外は、なんの問題もなかった。準備はすべて整った。で、一九八◯年の初めに、ジョージ・バトラーに電話した。オレは言った。『OKだ。もう一度やるぜ。そうだ、やるとも』」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.220

The Man with the Horn

Man With the Horn

「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」

録音:1980~1981

リリース:1981

[1980/05~06]

[1981/01/01]

[1981/03/01]

[1981/05/06]

Miles Davis - trumpet

Bill Evans - soprano saxophone (exc. 3)

Barry Finnerty - guitar (exc. 5)

Mike Stern - guitar (1)

Marcus Miller - bass (exc. 3, 5)

Al Foster - drums (exc. 3, 5)

Sammy Figueroa - percussion (exc. 5)

 

on "Shout" and "The Man with the Horn"

Robert Irving III - Yamaha CS30 synthesizer, piano

Randy Hall - synthesizer, guitar, celeste, Moog synthesizer, lead and background vocals (5)

Felton Crews - bass

Vincent Wilburn - drums

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・1970年代後半の隠遁期からの復活の作品

・ロック色、ファンク色が70年代とは異なる洗練された形で取り入れられた、フュージョン的な、80年代マイルスの基本形となる作品

・マイルスの復帰に関して重要な役割を果たした、甥のヴィンセント・ウィルバーン・ジュニアとの共演ニ曲が収録されている。ボーカル入りのタイトル曲の"The Man with the Horn"は、そのうちの一曲。

"Fat Time"という曲名は、当時太っていたギターのマイク・スターンが由来。

・リアルタイムで復活を待ちわびたファンにとっては、大変に感慨深い作品であったという。

重要度:★★★☆☆

「この新しいバンドでの演奏が、オレを音楽に連れ戻してくれた。引退していた時は音楽のことを考えないようにしていたから、何のメロディーも浮かんでこなかった。だが、彼らとスタジオにいると、またメロディーが浮かびはじめて、すごくいい気分になってきた。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.224

We Want Miles

we want miles

「ウィ・ウォント・マイルス」

録音:1981

リリース:1982

[1981/06]

[1981/07]

[1981/10]

Miles Davis – trumpet

Bill Evans – soprano saxophone

Mike Stern – electric guitar

Marcus Miller – bass guitar

Al Foster – drums

Mino Cinelu – percussion

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復活直後のライブのハイライト的作品。

・復帰ライブになったボストンの「キックス」や、日本公演の音源を含む。

・ マイルスに加え、ビル・エヴァンス(ピアニストと同名のサックスプレイヤー)、マイク・スターン(ギター)、マーカス・ミラー(ベース)、アル・フォスター(ドラム)、ミノ・シネル(パーカッション)というメンバー。このメンバーは、マイルスの「復帰バンド」と言える。

・ライブ盤ではあるが、3公演の素材を用いてテオ・マセロによってかなりの編集が成されている。

・ジャケットは、東京公演のポスターを流用したもの。東京公演は「ライヴ・イン・ジャパン’81」という完全版もある。

"Jean-Pierre"はマイルスの元妻フランシスの連れ子の名前。

グラミー賞受賞作。

・当時、多くの人にマイルス復活を印象付ける作品になったという。

重要度:★★★☆☆

「オレが本当に現れるのかどうか、疑って待っている連中のほうが多かったようだ。出ることがわかるとクラブは超満員になって、どこも足の踏み場がないくらいになった。オレを見て泣く人や、演奏を聴いて泣く人がいたりして、なんともすごかった。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.230

Star People

スター・ピープル(期間生産限定盤)

「スター・ピープル」

録音:1982~1983

リリース:1983

[1982/08/11]

[1982/08/28]

[1982/09/01]

[1983/01/05]

[1983/02/03]

Miles Davis – trumpet, keyboards

John Scofield – electric guitar (on tracks 2 and 3)

Mike Stern – electric guitar

Bill Evans – tenor & soprano saxophone

Marcus Miller – electric bass (exc. track 3)

Tom Barney – electric bass (on track 3)

Al Foster – drums

Mino Cinelu – percussion

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・ジャケットは、この時期から描き始めたマイルスの絵。マイルスの絵画の評価は多くの人のイメージに比べればアメリカでも評価されていたらしい。

・ギターのジョン・スコフィールドが参加している。

・正式にはクレジットされていないが、ギル・エヴァンスがアレンジで参加している。

"Star On Cicely"という、マイルスの当時の妻のシシリー・タイソンに捧げた曲がある。

・この作品を最後に、プロデューサーであるテオ・マセロとの長年に渡るパートナーシップを解消する。

"Come Get It""Speak / That's What Happened"では、ライブ音源が使われている。

重要度:★★★☆☆

「これが、テオ・マセロが最後にプロデュースしたレコードになった。今でもコンサートのオープニングで演奏することのある〈カム・ゲット・イット〉をレコーディングしたのもあのセッションだった。ギル・エバンスがアレンジを書いた〈スター・オン・シシリー〉という曲も『スター・ピープル』に入れた。タイトル・ナンバーの〈スター・ピープル〉は長いブルースで、オレのソロは最高の出来だったと思っている。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.242

Decoy

Decoy

「デコイ」

録音:1983

リリース:1984

[1983/06/31]

[1983/07/07]

[1983/09/05]

[1983/09/10]

Miles Davis - trumpet, synthesizer, arrangements

Branford Marsalis - soprano saxophone (on tracks 1, 3 and 6)

Bill Evans - soprano saxophone (on tracks 5 and 7)

Robert Irving III - synthesizer, synthesizer bass & drum programming

John Scofield - guitar

Darryl "The Munch" Jones - bass

Al Foster - drums

Mino Cinelu - percussion

Gil Evans - arranger (That's Right)

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・積極的に打ち込みのドラムやシンセサイザーを用いた作品。

テオ・マセロと別れ、マイルスのセルフ・プロデュースとなった。

・副プロデューサーのロバート・アーヴィング3世シンセサイザー)が、打ち込みドラムのプログラミングや作曲などで大きな役割を担っている。

・ベースはマーカス・ミラーが脱退し、ダリル・ジョーンズが加入。

・マイルスと対立していたウィントン・マルサリスの兄で、サックスのブランフォード・マルサリスが参加している。

"What It Is""That's What Happened"には、カナダで行われたモントリオール国際ジャズフェスティバルでのライブ音源が使われている。

"That's Right"では、ギル・エヴァンスがアレンジを担当している。

・前作に比べ、ファンク路線が徹底されている。

重要度:★★★☆☆

「スタジオではブランフォード・マルサリスのソプラノ・サックスと、バンドに欲しいと思っていたシンセサイザーが弾けるロバート・アーヴィングを加えた。そして、ギル・エバンスがいくつかアレンジを書いた。オレは、ブランフォードをレギュラー・メンバーにしたかったが、ウィントンとの仕事があってできなかった。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.247-248

You're Under Arrest

You're Under Arrest

「ユア・アンダー・アレスト」

録音:1984~1985

リリース:1985

[1984/01/26]

[1984/09/22]

[1984/12/26~27]

[1985/01]

Miles Davis – trumpet, "Police Voices, Davis Voices" on track 1, synthesizer on tracks 5 and 6

John McLaughlin – guitar on tracks 4, 5 and 6

John Scofield – guitar on tracks 1, 2, 3, 7, 8 and 9

Bob Berg – soprano saxophone on track 1, tenor saxophone on track 8 and 9

Al Foster – drums on tracks 1, 7, 8 and 9

Vince Wilburn, Jr. – drums on tracks 2, 3, 4, 5 and 6

Robert Irving III – synthesizers, celesta, organ, clavinet

Darryl Jones, aka "The Munch" – bass

Steve Thorton – percussion, Spanish voice on track 1

Sting (credited as Gordon Sumner) – French policeman's voice on track 1

Marek Olko – Polish voice on track 1

James "J.R." Prindiville – handcuffs on track 1;

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「ポップマイルス」的な面が最も出た作品。

黒人と警察の問題を扱ったコンセプトアルバムになっている。

・一曲目の"One Phone Call/Street Scenes"では、マイルスが声で出演している。また、ポリスのスティングがフランス語の警官のセリフを喋っている。この曲の冒頭では、ジャック・ジョンソンのテーマ」と言われるフレーズが使われている。

マイケル・ジャクソン"Human Nature"や、シンディー・ローパー"Time After Time"などのカバーを含む。この2曲は、晩年までライブの定番曲だった。

インパクトの強いジャケットもあり、一種の珍作的な評価をされることが多い。

・この頃、日本でVANという焼酎のCMに出演した。これ以降TVドラマやCM、映画などへの出演などを通して、ポップでセレブな80'sマイルスのイメージを確立していく。

重要度:★★★☆☆

「『ユアー・アンダー・アレスト』のコンセプトは、どこに行っても黒人と警官の間で起こる問題が基になっている。」マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.258

Aura

Aura

「オーラ」

録音:1985

リリース:1989

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・マイルスが、デンマークレオニド・ソニング賞という権威あるクラシックの賞を獲得したことがきっかけとなり、デンマークのミュージシャン達と共演した作品。作曲は全てパレ・ミッケルボルグ

制作から発売まで4年の期間が空いている。

・曲のタイトルに、色の名前が用いられている。

・ギターのジョン・マクラフリンと、ドラムのヴィンセント・ウィルバーン・ジュニアが参加している。

・このレコーディングに参加したマリリン・マズール(パーカッション)が、後に初の女性メンバーとしてバンドに加わる。

グラミー賞受賞作だが、評判が良いとは言えない作品。

重要度:★★☆☆☆

「音楽はすべて、デンマークの作曲家パレ・ミッケルボルグが作ったもので、オーケストラと電子楽器やシンセサイザーを混ぜ合わせたものだった。……コロンビアがレコードを出すはずだったが、約束を取り消されて、オレは『オーラ』というタイトルになるこのレコーディングを終わらせるために、連邦芸術基金助成金をもらわなきゃならなかった。そもそもはそれが、オレとコロンビアの関係の終わりのきっかけだった。」 マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ p.254